法定健康診断
健康の基準には、どんなものを考えますか。たいていは健康診断をもとに、血液検査から始まると思います。これらは労働安全衛生法で決められた、いわゆる法定健康診断に基づいています。
法定健康診断
事業主が実施することが法律(労働安全衛生規則第43〜47条による)で義務づけられている健康診断が一般健康診断です。主な健康診断には以下のものがありますが、これほど健診をして意味があるのかという声も上がっているほどです。
定期健康診断
定期健康診断とは、1年以内毎に1回実施するものです。
労働安全衛生法は、経営者に対して、パート社員など短時間しか働かない従業員でも、週30時間以上(正規従業員の4分の3以上)50人以上の労働者を使用する事業者は「定期健康診断結果報告書」を所轄労働基準監督署長に報告義務があります。
健康診断項目
定期健康診断項目 | 1 | 既往歴・業務歴の調査 |
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2 | 自覚症状・他覚症状の有無の調査 | |
3 | 身長*1・体重・BMI・腹囲*5・視力及び聴力(1000ヘルツ及び4000ヘルツ)*2 | |
4 | 胸部X線検査・喀痰検査*3 | |
5 | 血圧の測定 | |
6 | 貧血検査(血色素量、赤血球数)*4 | |
7 | 肝機能検査(GOT・GPT・γ-GTP)*4 | |
8 | 血中脂質検査(HDLコレステロール・中性脂肪・LDLコレステロール)*4 | |
9 | 血糖検査*4(空腹時血糖又はヘモグロビンAlc) | |
10 | 尿検査(蛋白・糖) | |
11 | 心電図検査*4 | |
省略できる項目 |
上記の項目で医師が必要でないと認める場合に省略できる健康診断項目 |
特定業務とは何か
特定業務とは、健康被害が懸念される業務に従事する従業員を対象に、労働安全衛生規則 第45条 特定業務一覧 労働安全衛生規則 第13条第1項第2号に掲げる業務に従事する労働者の健康診断で、他の健診と違って健康診断項目の省略できません。それだけ体への日常的な負担が懸念されるということでもあります。
特定業務一覧
1 | 多量の高熱物体を取り扱う業務および著しく暑熱な場所における業務 |
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2 | 多量の低温物体を取り扱う業務および著しく寒冷な場所における業務 |
3 | ラジウム放射線、X線その他の有害放射線にさらされる業務 |
4 | 土石、獣毛等の塵埃または粉末を著しく飛散する場所における業務 |
5 | 異常気圧下における業務 |
6 | 削岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務 |
7 | 重量物の取り扱い等重激な業務 |
8 | ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務 |
9 | 坑内における業務 |
10 | 深夜業を含む業務 |
11 | 水銀、ヒ素、黄リン、フッ化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、苛性アルカリ、石炭酸、その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務 |
12 |
鉛、水銀、クロム、ヒ素、黄リン、フッ化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気または粉塵を発散する場所における業務 |
13 | 病原体によって汚染のおそれが著しい業務 |
14 | その他労働大臣が定める業務 |
深夜業を含む業務とは?
上記における「深夜業を含む業務」とは業務の常態として深夜業を1週1回以上又は1月に4回以上行う業務(昭和23.10.1基発1456号)をいいますので、月3回までの範囲ならばいらないことになります。
自発的健康診断
「深夜業を含む業務」では、安衛法第66条の2に定められた自発的健康診断をについて確認します。
深夜業に従事する労働者が、自己の健康に不安を抱いて自らの判断で受診した健康診断の結果を事業者に提出した場合、事業者に事後措置等を講ずることを義務付けています。
(自発的健康診断の結果の提出)
第66条の2 午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間における業務(以下「深夜業」という。)に従事する労働者であつて、その深夜業の回数その他の事項が深夜業に従事する労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当するものは、厚生労働省令で定めるところにより、自ら受けた健康診断(前条第五項ただし書の規定による健康診断を除く。)の結果を証明する書面を事業者に提出することができる。
ここでいう「深夜業の回数その他の事項」の考え方は安衛則に定められています。
(自発的健康診断)
第50条の2 法第66条の2の厚生労働省令で定める要件は、常時使用され、同条の自ら受けた健康診断を受けた日前6月間を平均して1月当たり4回以上同条の深夜業に従事したこととする。
特定業務従事者の場合は「業務の常態として深夜業を1週1回以上又は1月に4回以上行う業務」とされているのに対して、自発的健康診断については「6ヶ月間を平均して1ヶ月4回以上深夜業に従事」したこととされています。
従って、深夜にかかる残業が6ヶ月平均で1ヶ月あたり4回以上になった場合は自発的健康診断を受診することができます。但し、特定業務従事者の深夜業を含む業務は「常態として深夜業を行うこと」とされていますから、臨時的である残業が深夜にかかって1カ月平均4回以上になった場合であっても特定業務従事者の健康診断を受診させる義務は事業者に生じないということになります。
なお、自発的健康診断を受診した場合は、特定業務従事者の健康診断(年2回)の1回分を受けたものとみなすことができます。